あなたを好きにならないための三箇条

なぜ手首を掴んだか。
それは…


「…離して」
「やだよ。ひっぱたくつもりでしょ」


彼女は手が早い。
男には容赦ないようだったし
未だヒリヒリする左頬に続いて右頬まであの激痛を味わうのは嫌だ。


ぐっと手首を握る力を強くすれば彼女は諦めたようにため息をついた
俺も力を抜く…っ！？


素早く振り上げられた右手が目の前スレスレを通って鼻先をかすめる

咄嗟に体の重心を後ろに下げてその手を回避したが
ドサっと間抜けに地面に座り込んでしまった


「…騙すなんてひどいなぁ」


まさか諦めた演技をしていたなんて。
咄嗟に避けなければ２度目のビンタを食らっていただろう

ニヤリと笑って立ち上がると俺は左手で振り回された彼女の右手首をまた強く握って
あいた右手で彼女の肩を押してベットに抑え込んだ




「…離してよ」




強く見上げられて背筋がゾクゾクと波打つ




「嫌」




俺は押さえ込んだ彼女の耳元でそっと囁いた–––––