あなたを好きにならないための三箇条
オレはイケメン
–––––高校2年の春


ざわざわと騒がしい教室

新しい面子に笑い
離れた友と残念がる

私にとって…

いや、
…オレにとってはあまり関係ない。

春休みが明け
入学式が近々に迫った四月の始業式
体育館はあんなに大きいというのに人でごった返していた
長い校長の話を延々と聞き
開放感を感じながら今まで一年間過ごした教室とは違う
新しい教室に入ってきた


教室の中心で笑っているのは
絶対オレ、だ。




「おーい、如月。女子が呼んでるぞー」


如月瑠衣(キサラギ ルイ)
それがオレの名前。
名前からしてカッコ良いんじゃないかなと自負している

騒がしい教室に響く声で名前を呼ばれたオレは
軽く首だけを教室の外、廊下に向けた

扉の前で1人の女子が頬を赤らめてモジモジとしている
真っ黒な黒髪を右に束ねた大人しそうな女子だ


「…んー。ちょっといってくる」



先程まで笑いあっていた友達を置いてオレはその子の所へ歩いて行った


「…なにかな」

キラキラとした微笑みを向けてその子を見下ろす

すると少女はオレを見上げながらよりいっそう頬を染めてぽそりと呟いた


「…ほ、放課後…校舎裏で待ってます…」


「わかった」

オレがもう一度軽く微笑むと
少女はまるで脱兎のようにオレに背を向けて逃げて行ってしまう

オレ自身も少女のいた場所から目を背け
先程までいた教室の中心に戻っていく。




…まさか、
たったこれだけのことが


オレの世界を変えるなんて思いもしなかった……
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