あなたを好きにならないための三箇条

「…カバン、ありがと」

少女を助ける時放り投げたカバンを彼が持ってきてくれたらしい。

自身のカバンに手をかける

––––そこで
彼の服の袖にかすかに血が付いていることに気がついた

「…これ、どうしたんだ…!」

グッと手を掴みその血をよく見えるようにすると
彼は「はぁ」と軽くため息をついた

「…お前。助けるのはいいけど後先考えなさすぎ。
男数人が女子抱き抱えたまま走ってる女に追いつけねーわけないだろ。
それに、あーゆー奴等はたとえ大通りに逃げたとしても追ってくるよ。あの女子もそうやって連れてきただろうし」

ぐいぐいと責められ言葉が詰まる

…私今、怒られてる…?



「…あと。これは、返り血。
俺、結構ケンカ得意なんだよね」


気だるそうに言った彼
その言葉で私は悟った


「…私たちが逃げた後、追いつかれないように守ってくれた…?」



ポツリとそう言うと
彼は顔を逸らして歩き出す

「ほら、いくよ」

素っ気ないけれど
優しい。


私はこの目に確かに彼の耳が赤く染まっているのが見えた



何故か

私たちを守ってくれた彼が
それを隠そうとする素っ気ない言葉が

愛しく感じてしまった


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