あなたを好きにならないための三箇条



〜〜〜





2人の関係を口外しないこと

相手が困っていたらできる限り助け合うこと

あとは…

お互いを絶対に好きにならないこと





〜〜〜


昨夜彼は私たちの関係にルールをつけた。



まるで夢から覚めるかのように朧げな記憶を探る





昨日の夜遅くメールを送った携帯を持ったまま

ベッドに仰向けに倒れこんで私は「はぁ」と深いため息をついた



横を見れば天井まで届く本棚にびっしりと漫画本が詰まっている



これらは私の宝物で私を救ってくれたと言っても過言ではない




「…イケメン、むずかしいなぁ」

ポソリと呟いた言葉を誰も聞いてはいない。

誰も聞いていないからこそ呟けたのだ



「『…オレなんかより、君にはもっといい人がいるよ』」



閉じた目の上に腕を置いて作られた言葉を紡ぐ



「『君は笑ってる顔が一番可愛いんだから』」


「『オレなんかを好きになってくれてありがとう』」


「『何かあったらオレを呼んで。絶対飛んでくるから』」


––––全部。
私が少女たちに言った言葉全部。
この漫画たちを根源として私が紡いだ “台詞”



もしも、あの時こんな言葉をかけてくれる誰かがいたなら
私はこんな風にはなってないのかな…



何度考えたところで過去は変わらないのに
私が
いや、
オレが
これからしなければならないことは決まっているのに





私みたいな人が増えなければいい






弱くて
何も出来ずに
泣くことしか出来ずに
全てを奪われて。





そんな人が1人でも減ればいい





…そのためならオレはなんだってしよう。




…けれどオレはまだ


「…まだ、きっと弱い」



過去に囚われたままだから。
過去に縛られたままだから。




彼と–––––– 一ノ瀬空と付き合うことで

誰かを救う強さを得られるのなら

私はなんだってしよう。




彼にとっても好都合なようだし

彼は端正な顔立ちで私と変わらず女子にはモテるだろうから。

格好良さを磨くにも使える




…ごめんね。空




私は オレは
あなたを利用させてもらう





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