あなたを好きにならないための三箇条




––––––彼の言葉は事実である

オレは…
いや


私は……女だ。



小さい頃から少女漫画が好きで
1000冊以上は本を持っていて。

女の人がどんな言葉に喜び
ときめくかを知っている

それでも私が漫画を読んで生まれた感情は

漫画の中の王子様みたいな人と出会いたいなんていう感情ではなくて。

漫画の中の王子様をどう演じることができるか
という馬鹿みたいな感情だった


…それでも。
昔からそんなことに憧れていたわけでもない。


一人称が“オレ”なことにも
男のようなそぶりをしていることにも意味があるのだ





「…私が、男のように振舞ってなにが悪いっ!?」

吐き捨てるように言い
彼を見上げれば
彼の口角がニヤリと歪んだ


「ふーん。本来の一人称は“私”なんだ。
っていうか、俺は悪いなんて言ってないよ?
『女のくせに』って言っただけ」


顔の横に手を付かれて距離が近くなる

腕を動かしてもさっきの様に容易く捉えられてしまうだろう

足も…
太ももと太ももの間に彼の足が滑り込んでいて動かすことを叶わない


私には何もできることがない


…だから男は嫌いなんだ。


目頭がなんだか熱い
泣きたくなんてないのに悔しくて仕方がない

こんな簡単に捕まってしまったことが
あまりにも悔しい




「…壁ドンなんて、現実でするとかウケるんだけど。」

どうにか堪えて絞り出した挑発
彼は嬉しそうに笑ってその唇を私の耳に近づけた



「黙って。悪いけど、ちょーっと協力してね」
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