姉貴は俺のもの
「 やめて! 触らないで! 」
闇雲に手足をバタつかせ、あの男かそうじゃないか区別がつかない目の前の人から距離を取ろうとした。
バキッ
ばきっ?
手になんの感触もなかったが、骨と骨がぶつかり合うような鈍い音が辺りに響き
顔を上げた。
「 美奈! 大丈夫かっ。 」
肩で息をしながら陸は腰を下ろし、
私の無事を確認するように顔をペタペタと触った。
「 陸ッ? 」
「 そうだっ。
ごめんな、1人にさせるべきじゃなかった… 」
普段とは違って優しい陸に、すがりつく
涙や体の震えが止まらなかった。
あの男に、また捕まるのかと思った……
陸のおかげで私の囲んでいた人たちはいなくなった。
勿論のこと、あの男もいない
「 陸、りくぅッっ 」
私は頭でも可笑しくなったんじゃないのか
陸に抱きつきながら、そう思った。
突然、いもしないあの男の姿が見え
あいつに過去された出来事を思い出して恐怖で心が支配されてしまった。
………今も、恐怖心はなくなっていない
「 陸、助けてっっ 」
自分があの男によって変えられることが、
嫌で嫌で仕方がないんだ。
「 分かった。 」
脈絡のないお願いに、凛とした態度をとりながら陸はキリッとした目で応えた。
「 キスするぞ 」
「 えっ 」
驚き、陸の肩に手を押し当てて拒否しようとしたが
「 もう遅い 」
私の顎をいとも簡単にクイッと上げた陸は、顔を近づけてきた____