姉貴は俺のもの
陸side


肩の傷を縫ってもらった後、美奈が診てもらってる診察室の方に向かうと


ちょうど診察が終わった美奈が佐賀さんと中から出てきた。



「 どうだった? 」


パニックになってただけで、病院に来て
落ちつけばまた前の美奈に戻ってるはず



そんな馬鹿みたいな願いを秘めながら、美奈の顔を覗き込んだが

怯える様子もなく


複雑な表情で首を横に振るだけだった。



「 陸、ちょっといいか 」


美奈に付き添って、医者の話を聞いてくれてた佐賀さんに腕を引かれる



近くの椅子に美奈が座るのを目の端で捉えながら、

美奈から少し離れた場所で佐賀さんと向き合った。



「 先生によれば美奈帆ちゃんは解離性健忘という病名で、

心因性により、一時的に記憶を失ってるそう
だ。」



「 ……どこまで覚えてるんですか 」


動揺するわけでもなく、そう尋ねた。


佐賀さんは俺の態度に目を丸くする



「 自分が中学3年生で、今の季節は春だとしか___

名前も覚えてないそうだぞ 」


中3の春といえば、忘れもしない
・・
あれがあった時期か


「 俺や高槻のことは。 」


「 覚えてない。


_____あ、でも。 誰か分からないけど、陸という名前だけは覚えてるって言ってたな…… 」



「 俺の名だけ? 」



「 あぁ 」


その瞬間、嫌なことを思いついてしまった。



それは美奈の記憶が戻ったら、許されることじゃない事……。


でも、こんな機会は今しかない___



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