姉貴は俺のもの
そんなに距離はないけど、二階から移動しようとすると
さすがに怖い
下に落ちる恐怖か、あの男に捕まる恐怖か
二択を迫られたが、即座にあの男に捕まる恐怖の方が勝るとわかった。
涙で頬を濡らしながら、なんとか隣の家に移動して
手でガラス戸を必死に叩いた。
…助けて、たすけっ
「 助けてください! 」
「 おい、こらてめぇ!! 」
うちの家から怒った声が轟いてきた。
「 助けてっ!!
開けてください! お願いしますっッ!! 」
死にものぐるいで助けを乞うと、何度目かで
部屋の明かりがついた。
「 おじさん! お願いします、開けてください!! 」
自分家のベランダの方へ振り向いて、目の前の扉が開くまで
あの男が来ないか確認した。
ガラッ
「 美奈帆ちゃん? どうしたの?? 」
優しく家の中に招き入れてくれるおじさんに、
泣き声を上げてしまった。
今回は、助かった。 よかった………
泣き止むまでずっと背中をさすってくれるおじさんの優しさに
私はしばらくの間甘えた。