姉貴は俺のもの
館内に入ると辺りは薄暗く、
意外と家族連れが多い
「 綺麗っ……… 」
ペンギンが泳ぐ姿を下から見上げながら、
うっとりとした声を漏らした。
自由にのびのびと泳ぐ姿は、どこか憧れるものがある
________だけど、水槽という檻に入ってると客観視してしまうと
その熱も次第に冷めて行く
「 美奈、考え事か? 」
難しい顔をしていたのだろうか
陸くんは私に問いかけながら、顔を覗き込んできた。
「 ううん、何も。 」
首を横に振り、
再び見上げて見るとペンギン達がいなくなっている
「 ねぇ、お母さんっ
今からペンギンさんの餌やりだって!
見に行きたいッ 」
はしゃぐ女の子に、
そうかと納得した表情を作り、目を伏せる
「 ………美奈? 」
歩いて、次の水槽に向かいながら
自分のお母さんの顔を思い出そうとした。
「 陸くん。
私のお母さんってどんな人だった? 」
情けないな……
ちっとも思い出せないや
「 …………良い人だ。
優しい人だった 」
言い方が感慨深かった。
「 そう。 」
頷きながら、次の水槽を見る
「 なぁ、美奈。
ちょっと休んだ方が良くないか 」
「 なんで? 」
トーンを変えずに訊き返すと、陸くんの手が私の肩に添えられた。
「 なっ、「 フラついてる___
長いこと外出してなかったから疲れたんだ。 」
何するのと言う前に、陸くんの唇に視線が吸い込まれそうになって言葉を呑み込んだ。
「 っっ………疲れてない、しッ 」
力強く言おうとすると、目眩がした。
「 ほらっ、言わんこっちゃない 」
大人しく俺の言うこと聞けよ、と言いながら
陸くんは私を近くのベンチに座らせてくれた。