姉貴は俺のもの


「 でも、そしたら私 陸くんに気を遣わせてばっかりって事になるよね……。 」



陸くんは、近くの椅子に座った私の前を何歩か歩いてからこちらへ振り返った。


「 俺はな、一人でこんな所来てもちっとも楽しくないような男だ。


美奈といるから楽しい



だから、出来る限り美奈が見たいと思うもの。
したい事を叶えてやりてぇって思ってる。



………美奈は、体調悪くても

これが見たかったんじゃないのか 」



陸くんは含み笑いで私を見る



その瞬間、胸の中で何かが湧き上がった。


「 ふぇっ 」



ちょっと……ヤバイかもっ。



私が泣き出したと同時に、プロジェクトマッピングが始まって


薄暗かった廊下がさらに暗くなる



「 美奈っ?」



ぎょっとしたような声を出す陸くんに、涙は止め処なく溢れ出してくる




「 はっ、なんで泣くんだよ 」


ショーのはじめの方は静かな音が鳴ってるだけなので、
陸くんの困ったような口調が廊下に響き渡った。




「 だって…………… 」


陸くんは私のこと、恋人だと思って今まで接してくれてたけど

私はそうじゃなかったんだよ?




………陸くんが怖かったこともある。


けど私は。


記憶のない空っぽな状態で一人でいたくなかった。

陸くんよりも自分の気持ちを優先させてしまったんだ………



そして何より、陸くんと私とでは不釣り合いすぎて、
絶対好きになんてならないと思ってたんだ。





「 なぁ、美奈。 どうして泣いてんだ?


俺なんかしたか?? 」


違う


かぶりを振るけど、暗くて相手には伝わらない



「 どっか痛いのか。

そうか身体、辛いか? 」



声がだんだん近づいてくる



首を横に振りながら、陸くんがどこにいるかも分からないのに

顔を上げる。




「 わたしに、優しくする事ないっ。
こんな最低なん人間だから。

なのにっ………



陸くんは優しすぎるんだよ。


もう、引き返せないっッ 」


顔を歪め、これから言うことのために息を吸い込む



「 美奈、? 」




「 私………






陸くんのこと好きになっちゃた____ 」




明かりが大きくなり、目を見張る陸くんの顔が

はっきりと見えた。




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