となりの芝田は、青い。
進級して3週間が過ぎた、朝。
SHR前の教室で。
「おい芝田。昨日何時に寝た?」
「聞いてくれ相棒。実は俺、一睡もしてねぇんだ」
「マジか。あのままずっと起きてたのか!?」
「寝たらおしまいな気がして……ランク26まで上げた」
「ハイジンかよ」
なにやら男子が盛り上がっている。
たぶんスマホアプリの話だろう。
寝ずにゲームしてたなんて、芝田らしい。
「おはよ、薙乃(なぎの)」
前の席の梨沙(りさ)が登校してきた。
「おはよう梨沙」
「今月号のCUTIEEN読んだ?」
CUTIEENは女子中高生向きのファッション雑誌だ。
「読んだ! RINかわいすぎた!」
RINはわたし達と同じ年のモデル。
わたしは彼女に憧れている。
「どんな服も似合うよね。メイクも超可愛かった。あとさ、特集ヤバくなかった?」
「彼氏彼女のQ&Aのやつ?」
「それ」
現役高校生カップルが読者から寄せられた質問に答えるコーナーにはリアルな恋愛事情が書いてあって読んでドキドキした。
告白はどんなシチュエーションだったとか。
初デートはどこに行ったとか。
ファーストキスは……いつだったとか。
「カレシ欲しいなぁー!」
「受験生だけどねわたし達」
「やめてぇえ」
女子はこんなにもお洒落や恋に興味津々なのに――。