秘密の会議は土曜日に
モテる人はやはり違う。自分を好きかもと言われても鴻上くんは「へぇー」の一言で済ませてしまった。


昼休みが終ると、午後は追い込むように仕事する。今日こそは早く帰って掃除しないと、明日には高柳さんが家に来るのに部屋は散らかりっぱなしだ。


「資料室は27階だっけ。急いでる時には遠くて困る……!」


ちょうど登りのエレベータ来たので慌てて飛び乗る。すると、思いがけず高柳さんの顔が見えた。


「あわっ……」


何から口にしていいのかわからず、言葉に詰まる。



『研修会では私何やらかしました?』


『その前に、助けて頂いてありがとうございました。』


『鴻上くんが気を使ってくれて、私と付き合ってるなんて噂を流したそうですが、実態は違います。』



ああ、何から言えばいいの!?



……でも、結局そのどれも口にはできなかった。


「何階ですか?」


高柳さんの隣には美人秘書が寄り添うように立っていたからだ。彼女は親切にも、私に行き先を聞いてくれる。


「27階お願いします……」


高柳さんには会釈だけして、二人から距離を離れて立つ。


「この前の学会では急に予定を変更してお帰りになったから、あのあと大変だったんですよ?」


「悪い、いつも永田さんがフォローしてくれて感謝してる。」


「ふふっ。ありがとうございます。

来月のニューヨーク出張では、先に帰ったりしないで下さいよ?ずっと一緒にいられるの楽しみにしてるんですからね。」


「忘れてた……。その予定来月のいつ頃だった?」


「もう、高柳さんったら」


仲の良さそうな二人の会話が聞こえてくる。来月はニューヨーク行くんだ……。ずっと一緒。嫌でも耳に残る話題。

あっという間に27階について、とぼとぼと資料室に向かう。


「この前教えてもらったから、資料の場所はもうわかるし……」


資料棚を探していると、急いでこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。
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