秘密の会議は土曜日に
結局、きれいなバラの花束はゴミ箱に水をはって活けるというとんでもなく残念な有り様になってしまった。
「あぁ……。今日ほど自分の生き方を反省した日はありません。花瓶も持ってないなんて、女として失格です。」
「いや俺の方が気が利かなくて悪かった。時間もあるから買いに行こうか。」
二人で駅前のインテリアショップに買い物に行って、その間に高柳さんの過去の話を聞いた。
高柳さんは、エヴァーグリーンに勤める前はベンチャー企業に勤めていたらしい。本当はエヴァーグリーンのような会社じゃなくて、もっと小さな会社の方が性に合っているそうだ。
「……でも、高柳さんに次期社長になってほしいって人多いですよ?執行役員になるのも間近だとか。」
「これ以上堅苦しい会議が増えたら困る。エヴァーグリーンでやりたかったことはもう済んでるし、この会社を背負う気はないよ。」
「やりたかったことって、何ですか?」
「前の会社にいたとき、デスマーチとか言われそうなプロジェクトに参加してたんだ。
無理なスケジュール、度重なる仕様変更でメンバーか次々と疲弊して、一人、また一人と倒れて。」
「うわぁ……ひどい修羅場ですね」
「後になってからデスマの原因を作ったのがいい加減なプロマネだと分かったんだけど、意外なことにそのプロマネが俺をスカウトしたんだ。
この人が権力握ってる限り同じようなプロジェクトが続くんだと思ったら、何だかほっとけなくて。」
「それでエヴァーグリーンに入ったんですか……!まさか入社してすぐに左遷した上司というのは」
「そう、その人。社内政治にしか関心がなくて、ベンダーに圧力かけたり、賄賂受け取ったりとやることが酷かったから。」
「血濡れの反逆者の伝説はそうやって出来上がったんですね……」
「その人をどうにかするために入社したから、実際は反逆というより刺客なのかな」
穏やかな顔で恐ろしいことを言う高柳さん。でも、プロマネをしてる高柳さんは決してデスマーチになんてならないようにプロジェクトを調整して、メンバーを守ってくれている。
だから厳しくても、みんな高柳さんについていきたくなるんだ。
私も仕事で高柳さんに貢献したい。前に高柳さんが私というエンジニアが必要だと言ってくれた時は本当に嬉しかった。だから組織の末端だとしても、高柳さんのために仕事ができるなら幸せだ。
家に戻ると、白くてツヤツヤした花瓶に改めてバラを活けた。うっとりするほど綺麗な108本の花束。
「すみません、花瓶まで買って貰っちゃって」
「それは全然構わないよ。そんなことよりちゃんと考えて。
さっきから、結婚の話題から逃げてるでしょ」
背中の方からお腹にふわっと腕が回されて、私の体は高柳さんに包まれる。
「あのっ……」
急なことにドキッとして動けないでいると、首筋にキスされて余計に体が強ばる。
「あぁ……。今日ほど自分の生き方を反省した日はありません。花瓶も持ってないなんて、女として失格です。」
「いや俺の方が気が利かなくて悪かった。時間もあるから買いに行こうか。」
二人で駅前のインテリアショップに買い物に行って、その間に高柳さんの過去の話を聞いた。
高柳さんは、エヴァーグリーンに勤める前はベンチャー企業に勤めていたらしい。本当はエヴァーグリーンのような会社じゃなくて、もっと小さな会社の方が性に合っているそうだ。
「……でも、高柳さんに次期社長になってほしいって人多いですよ?執行役員になるのも間近だとか。」
「これ以上堅苦しい会議が増えたら困る。エヴァーグリーンでやりたかったことはもう済んでるし、この会社を背負う気はないよ。」
「やりたかったことって、何ですか?」
「前の会社にいたとき、デスマーチとか言われそうなプロジェクトに参加してたんだ。
無理なスケジュール、度重なる仕様変更でメンバーか次々と疲弊して、一人、また一人と倒れて。」
「うわぁ……ひどい修羅場ですね」
「後になってからデスマの原因を作ったのがいい加減なプロマネだと分かったんだけど、意外なことにそのプロマネが俺をスカウトしたんだ。
この人が権力握ってる限り同じようなプロジェクトが続くんだと思ったら、何だかほっとけなくて。」
「それでエヴァーグリーンに入ったんですか……!まさか入社してすぐに左遷した上司というのは」
「そう、その人。社内政治にしか関心がなくて、ベンダーに圧力かけたり、賄賂受け取ったりとやることが酷かったから。」
「血濡れの反逆者の伝説はそうやって出来上がったんですね……」
「その人をどうにかするために入社したから、実際は反逆というより刺客なのかな」
穏やかな顔で恐ろしいことを言う高柳さん。でも、プロマネをしてる高柳さんは決してデスマーチになんてならないようにプロジェクトを調整して、メンバーを守ってくれている。
だから厳しくても、みんな高柳さんについていきたくなるんだ。
私も仕事で高柳さんに貢献したい。前に高柳さんが私というエンジニアが必要だと言ってくれた時は本当に嬉しかった。だから組織の末端だとしても、高柳さんのために仕事ができるなら幸せだ。
家に戻ると、白くてツヤツヤした花瓶に改めてバラを活けた。うっとりするほど綺麗な108本の花束。
「すみません、花瓶まで買って貰っちゃって」
「それは全然構わないよ。そんなことよりちゃんと考えて。
さっきから、結婚の話題から逃げてるでしょ」
背中の方からお腹にふわっと腕が回されて、私の体は高柳さんに包まれる。
「あのっ……」
急なことにドキッとして動けないでいると、首筋にキスされて余計に体が強ばる。