秘密の会議は土曜日に
「理緒ー、そのER図ぐちゃぐちゃだぞ?」


「ふぎゃああ!!」


翌日の仕事中も、宗一郎さんの言葉が頭から消えない。頭が働いてないせいか、酷い資料を作って鴻上くんに呆れられてしまった。


「その悲鳴は何なんだよ。

顔赤いけど熱でもあんの?」


「だだ大丈夫。いつもの赤面性!」


おでこに手を当てて熱を図ろうとした鴻上くんは、「そんなにはっきり照れられるとこっちが恥ずかしいっていうか」と手を引っ込めた。


その後お昼になると、鴻上くんは宗一郎さんとのミーティングがあるので一人でランチに向かう。


「……もうすぐ出張?」


「そうなの!こんなチャンスめったに無いから、今度こそ勝負かけるつもり。」


カフェテリアで永田さんの声が聞こえた。私の意思とは関係なく、耳が勝手に彼女の声を拾う。


「勝負ってどんな?

まさか『ブッキングミスでお部屋がひとつしか取れてなくってー、ベッドも何故かダブルしか空いてなくってー』とかいうヤツ?」


「あー、それダメだったわ。自分でさっさとホテル予約して終わり。」


「もう実行済みかよ!」


楽しげな声を聞いて、私は味噌煮込みうどんを喉に引っ掻けた。


「何かいい方法ないかなー、高柳さんって堅いんだもん。1回やればトリコにさせられる気がするんだけどなぁ。」


「出た、永田の自信過剰」


「だって顔と体には自信あるもーん!『私なんて可愛くない』とか言ってたら逆にムカつくでしょ?」


「アンタのその自信、ある意味尊敬するわ。そこまで言うなら一服盛ってみたら?

それで酒に酔ったフリして介抱してもらうの。当然、体は密着して。」


「盛るって何を?」


「ヤダ言わせないでよ。夜の特効薬ってヤツ?マムシドリンクとか。

そしたらあの高柳さんでもハアハアして永田のこと襲ってくれるんじゃない?」


「そっかなぁ……!

ウフフ、絶対そうだよね!」




マムシ……はあはあ……襲う……!?


彼女たちの会話をばっちり盗み聞きしてしまって、背中に汗がつたう。



「のぉおーーーう!!」


「理緒、急に頭抱え込んでどうした!?」


ちょうど良いところに鴻上くんが帰ってきてくれた。


「ねえ鴻上くん、マムシドリンクってどんな味なの!?」
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