秘密の会議は土曜日に
「げふっ……」


たまたま一緒のメニューを選んでいた鴻上くんが、私と同じように味噌煮込みうどんを喉に引っ掻ける。


「そのうどん熱いよね、私もさっき引っ掻けちゃった。」


「ごほっ……一緒にすんなこのボケっ！

誰のせいだと思ってんだっ！」


鴻上くんはむせたり怒ったりと忙しい。水をガブガブ飲んでから一呼吸おいた。


「知らねぇよ味なんか！俺はそんなもんに頼る必要ねー！！

この俺が愛飲してるみたいに聞くなこのヤロー！」


何故か「侮辱だ」と涙目になった鴻上くんに怒鳴られる。


「だって鴻上くん以外に聞ける相手なんていないし。でも鴻上くんも知らないなら、自分で飲んでみるしか……」


「馬鹿よせ！若い女が一人でそんなもん買ってたら周りになんて思われるかっ。だいたい何でそんなこと知りたがってんだ？」


「だって、こっそり盛られたら気が付けるのか心配で」


「どんな心配だよ！女に飲ますようなもんじゃねーよ！

ほら、ええと、あれだ……もし理緒が責任とってくれるんなら、俺が飲んでやらなくもないけどっ？」


「いやいいよ。体に悪そうだし、健康被害が出たら私には責任取れないもん。」


「……。

理緒のばか……」


鴻上くんは熱々のうどんを掻き込むように食べてる。今日もミーティングで疲れたのかもしれない。


「いや、今お前に変な質問されるまでは疲れてなかったから……。

今日の高柳さんは異様に機嫌良かったんだよなー。逆に怖いくらい」


「そ、そうなんだ。」


「彼女でもできたのかって、もっぱらの噂。」


「わ、わわ……」


マムシドリンクのことは頭に残ったままだけど、午後の仕事が始まると忙しくて考えている間も無い程だった。

外部のスタッフの私も忙しいけれど、エヴァーグリーン社員の鴻上くんや糸井沢さんは遥かにその上を行っている。二人とも実務能力は凄まじく、さすが大手企業の社員さんという貫禄だ。
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