秘密の会議は土曜日に
でも、忙しいせいか二人ともピリピリした様子で話し合ってる。


「データの形式に変更入ったから、ここもやり直し」


「俺らが対応する必要あるの?データの作成元に責任取らせれば?」


「当然そうしてるけど、向こうだけにやらせると全体がもっと遅れんだよ。だからうちのグループでも巻き取ることにした。」


「鴻上は人が良すぎだよ、俺たちだって余裕ないじゃん。

こんなの、確認項目を減らして速度を上げるしかなさそうだけど」


「そこなんだよなぁー、どこ妥協していいんだか……。全部チェックしてたら間に合わねーし……」


「でもダメー!!確認項目は省いちゃダメです!」


二人の話し合いに思わず割り込んでしまう。


「理緒ちゃん?

ここは理緒ちゃんには関係ない分野だから」


「それはそうなんですが、ここは機能の一番大事な部分だし、バグが出たら後の行程では見つけにくいから……」


「そんなこと言われなくても分かってるよ。でもただの理想論だ。現実的な折り合いをつけないと」


糸井沢さんが私にイラッとしてたのは分かったけど、私も引けなかった。こうやって急いで作業して不具合が出たのを何度も見てる。エヴァーグリーンのような大手はうちの会社とは違うかもしれないけど、でもミスが無いとは言い切れない。


「人手が足りないなら私も手伝いますから」


「理緒ちゃんだってけっこう仕事抱えてるでしょ。それに自分と関係ない分野のパラメータチェックなんて、急にやれと言われてできるものじゃ……」


「できます。うちの会社はいつも人が足りなくて、担当外の仕事に駆り出されるのには慣れてますから。大丈夫です。やらせてください。」


「……理緒、徹夜でもいける?これ今週が期限だから本当に余裕ねーんだ」


鴻上くんが私を人手としてカウントしてスケジュールを引き直す。それを見た糸井沢さんが「彼女に無理な仕事させんなよ」と渋い顔をした。


「大丈夫、こいつ馬鹿っぽいけど仕事だと頼りになるから。

理緒、悪いけど力貸して。21時に作業の説明するから、それまでに理緒の仕事は片付けといて」


「ラジャ!」


自分の仕事を急いで終えてデスクを離れ、宗一郎さんに電話かける。


「……仕事が終わらなくて、今日は帰れなさそうです。」


「理緒に徹夜なんかさせられない。仕事は遅れても構わないから帰ってきな。」


「いえ、駄目なんです。今頑張らないと行程が遅れちゃうんです。

プロマネさんとしては、多分この遅延は許可できないはず……」


「理緒はこんなときに俺に夫の顔をさせてくれないの?」
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