秘密の会議は土曜日に
14 遠く離れても
次の日も、その次の日もフラフラしながらなんとか仕事をこなす。土曜日には宗一郎さんが出張に行ってしまうのに、夜は殆ど一緒に過ごす時間もない。
会社から帰るとすぐに寝るように諭されてしまうので、話ができるのは朝食の時間に少しだけ。
「出張からはいつ頃帰ってくるんですか?」
「二週間後の土曜日。俺が離れてる間、理緒が無理し過ぎないか本当に心配だよ」
私は永田さんに一服盛られないかが一番心配だけど……。
「これくらいの仕事は、無理とは言いませんよ。
あの、何人くらいで行くんですか?」
「秘書の永田さんと二人」
「二週間もの間、 ふたりっきりですか……」
「現地で訪問する企業の重役が彼女の親戚なんだ。その縁もあって同行してもらうんだけど、
……もしかして心配してる?」
「それはもう、とんでもなく心配しております。」
大きく頷くと、宗一郎さんはどういうわけか嬉しそうだ。
気がかりとなってるマムシドリンクの話をしようか迷ったけれど、朝の話題としても、この素敵なカフェにも似合わないのでやめておいた。
「理緒が心配することは何も無いよ。できるだけまめに連絡する。」
「あの……変な味がする飲食物にはお気をつけください。ご無事で……」
「ん?危険なこともないし、すぐに帰ってくるよ」
爽やかな笑顔を向けられて、自分が言おうとしてることがますます恥ずかしくなった。
出発前の土曜日は、宗一郎さんがどうしても行きたい場所があると言うので付いていくと、アパレルブランドのお店にたどり着く。
「ここで理緒の服を買うから」
「洋服なら最近買ったばかりですよ。マニュアルもあるから当面は足りてます。」
「そのマニュアルなら、俺が改訂を加えた。7割方は会社NGとしたから、不足分を補わないと。」
「7割NG!?そんなに酷かったですか?」
「休日の服装としては可愛い。でも会社はダメ。俺の目が届かない間は尚更ね。」
宗一郎さんは店員さんと話し合いながら服を選び、私はその間動くマネキンと化した。もちろん、マネキンのような体型じゃないので着られる服には限りがある。
「今年の春夏は背中見せトップスとか、ショートパンツとか引き続き流行っていて……こういうのはどうですか?」
「うん、可愛い。これも休日用に買っておこう。」
「宗一郎さん、休日はそんなにたくさんありません……」
仕事の服を選ぶと言いつつ、休みの日の服ばかり増えていく。
「ワイドパンツは今年っぽいんですけど、お客様の場合は身長のバランスからちょっと……」
「うーん……」
店員さんと宗一郎さんが揃って難しい顔をしてる。この服は似合ってないらしい。袴にしか見えないので、これが変なことは私にも分かる。
「お顔が丸いんで、基本手足は出した方がスッキリ見えますよ?
シャツワンピとかどうですか?コーデ要らずで一枚で着ても、さっきのショートパンツと合わせても可愛いですよ。」
「確かに、よく似合ってる。この辺りが妥協しどころか……」
シャツワンピとコクーンワンピというものを追加で選んでそのお店を出る。お会計は宗一郎さんが済ませていて、どう食い下がっても「俺の我が儘だから」とお金を出させてくれなかった。
「もう少し数を揃えた方が良さそうだな」
宗一郎さんが別のお店に入ろうとしたので、慌てて引き留める。
「洋服を選んで頂けるのは嬉しいですけど、しばらく会えなくなるので、できるなら二人で過ごしたいです。」
会社から帰るとすぐに寝るように諭されてしまうので、話ができるのは朝食の時間に少しだけ。
「出張からはいつ頃帰ってくるんですか?」
「二週間後の土曜日。俺が離れてる間、理緒が無理し過ぎないか本当に心配だよ」
私は永田さんに一服盛られないかが一番心配だけど……。
「これくらいの仕事は、無理とは言いませんよ。
あの、何人くらいで行くんですか?」
「秘書の永田さんと二人」
「二週間もの間、 ふたりっきりですか……」
「現地で訪問する企業の重役が彼女の親戚なんだ。その縁もあって同行してもらうんだけど、
……もしかして心配してる?」
「それはもう、とんでもなく心配しております。」
大きく頷くと、宗一郎さんはどういうわけか嬉しそうだ。
気がかりとなってるマムシドリンクの話をしようか迷ったけれど、朝の話題としても、この素敵なカフェにも似合わないのでやめておいた。
「理緒が心配することは何も無いよ。できるだけまめに連絡する。」
「あの……変な味がする飲食物にはお気をつけください。ご無事で……」
「ん?危険なこともないし、すぐに帰ってくるよ」
爽やかな笑顔を向けられて、自分が言おうとしてることがますます恥ずかしくなった。
出発前の土曜日は、宗一郎さんがどうしても行きたい場所があると言うので付いていくと、アパレルブランドのお店にたどり着く。
「ここで理緒の服を買うから」
「洋服なら最近買ったばかりですよ。マニュアルもあるから当面は足りてます。」
「そのマニュアルなら、俺が改訂を加えた。7割方は会社NGとしたから、不足分を補わないと。」
「7割NG!?そんなに酷かったですか?」
「休日の服装としては可愛い。でも会社はダメ。俺の目が届かない間は尚更ね。」
宗一郎さんは店員さんと話し合いながら服を選び、私はその間動くマネキンと化した。もちろん、マネキンのような体型じゃないので着られる服には限りがある。
「今年の春夏は背中見せトップスとか、ショートパンツとか引き続き流行っていて……こういうのはどうですか?」
「うん、可愛い。これも休日用に買っておこう。」
「宗一郎さん、休日はそんなにたくさんありません……」
仕事の服を選ぶと言いつつ、休みの日の服ばかり増えていく。
「ワイドパンツは今年っぽいんですけど、お客様の場合は身長のバランスからちょっと……」
「うーん……」
店員さんと宗一郎さんが揃って難しい顔をしてる。この服は似合ってないらしい。袴にしか見えないので、これが変なことは私にも分かる。
「お顔が丸いんで、基本手足は出した方がスッキリ見えますよ?
シャツワンピとかどうですか?コーデ要らずで一枚で着ても、さっきのショートパンツと合わせても可愛いですよ。」
「確かに、よく似合ってる。この辺りが妥協しどころか……」
シャツワンピとコクーンワンピというものを追加で選んでそのお店を出る。お会計は宗一郎さんが済ませていて、どう食い下がっても「俺の我が儘だから」とお金を出させてくれなかった。
「もう少し数を揃えた方が良さそうだな」
宗一郎さんが別のお店に入ろうとしたので、慌てて引き留める。
「洋服を選んで頂けるのは嬉しいですけど、しばらく会えなくなるので、できるなら二人で過ごしたいです。」