秘密の会議は土曜日に
16 誓いと議事録
それからは鴻上くんがくれたアドバイス「何もしなくていい」を守り、一週間が経った。
今日は宗一郎さんが帰ってくる。うっかりしていて何時に帰ってくるかもわからないけど、今日ということだけは確かだ。
「私が作るものでも、何もないよりはいい……はず。」
二週間もニューヨークにいたのだから和食の方がいいかなと、定番のお総菜を作る。私でも失敗しないような、簡単なものばかり。
それから、意を決して大事にしまっていた婚姻届を取り出す。空いている欄に名前を書こうとして、思わぬ攻撃を受けた。
「フミャーー!」
「ああああ、なんてことを……」
りっくんの爪により、真ん中から2つに裂けた婚姻届け。宗一郎さんが書いてくれたのに、使えなくなってしまったではないか。
仕方ないので、市役所に行って新しいのを貰ってくる。ついでに婚姻届に書く本籍地を調べたり、住所変更届を提出していたらかなりの時間が経っていた。
慌てて家に戻ると、部屋の気配が変わっていた。玄関には宗一郎さんの靴。心臓がドクッとなって、走って部屋に駆け寄る。
リビングには宗一郎さんがうずくまるように座っているのが見えた。傍らには、りっくんがぴったりと身を寄せている。
「理……緒……?」
憔悴しきった顔。少し痩せたようにも見える。
「大丈夫ですか!?お腹でも痛いんですか?」
失礼します、と宗一郎さんの額に手を当てると特に熱は無さそうだった。それより、宗一郎さんが固まったように全然動かないのが気になる。
手には真っ二つになった白い紙を握りしめて。
「あ!すみません、それ、りっくんがさっきビリッとやっちゃったんですよね。今、新しいのを貰ってきましたから。」
「……え?」
鞄から書類を出すと、またもりっくんが目を光らせたので大急ぎで鞄にしまった。
「もう、何でこの紙ばかりそんなに攻撃したがるの?」
改めてキャビネットにしまおうとすると、宗一郎さんに、はっとするほど強い力で腕を引かれ、床に崩れ落ちるように座る。
「宗……っ」
頬に手が触れて、首の後ろまで滑ると、唇が塞がれる。
唇に触れた瞬間から強引に唇を開かされ、尖った舌先が執拗に私の舌を撫で、挟まれて強く吸われる。いつもと違う荒々しいキス。
「んっ…ふぁ……」
やがて肩までフローリングが当たって、宗一郎さんは私の体に覆い被さっていた。
「はっ……、はぁ……」
くたっと力の抜けた体。ずっとずっとキスされていたので、息が上がってる。やっと、呼吸を整えて、一番言いたかったことだけ伝えた。
「……お帰りなさい。宗一郎さん。」
今日は宗一郎さんが帰ってくる。うっかりしていて何時に帰ってくるかもわからないけど、今日ということだけは確かだ。
「私が作るものでも、何もないよりはいい……はず。」
二週間もニューヨークにいたのだから和食の方がいいかなと、定番のお総菜を作る。私でも失敗しないような、簡単なものばかり。
それから、意を決して大事にしまっていた婚姻届を取り出す。空いている欄に名前を書こうとして、思わぬ攻撃を受けた。
「フミャーー!」
「ああああ、なんてことを……」
りっくんの爪により、真ん中から2つに裂けた婚姻届け。宗一郎さんが書いてくれたのに、使えなくなってしまったではないか。
仕方ないので、市役所に行って新しいのを貰ってくる。ついでに婚姻届に書く本籍地を調べたり、住所変更届を提出していたらかなりの時間が経っていた。
慌てて家に戻ると、部屋の気配が変わっていた。玄関には宗一郎さんの靴。心臓がドクッとなって、走って部屋に駆け寄る。
リビングには宗一郎さんがうずくまるように座っているのが見えた。傍らには、りっくんがぴったりと身を寄せている。
「理……緒……?」
憔悴しきった顔。少し痩せたようにも見える。
「大丈夫ですか!?お腹でも痛いんですか?」
失礼します、と宗一郎さんの額に手を当てると特に熱は無さそうだった。それより、宗一郎さんが固まったように全然動かないのが気になる。
手には真っ二つになった白い紙を握りしめて。
「あ!すみません、それ、りっくんがさっきビリッとやっちゃったんですよね。今、新しいのを貰ってきましたから。」
「……え?」
鞄から書類を出すと、またもりっくんが目を光らせたので大急ぎで鞄にしまった。
「もう、何でこの紙ばかりそんなに攻撃したがるの?」
改めてキャビネットにしまおうとすると、宗一郎さんに、はっとするほど強い力で腕を引かれ、床に崩れ落ちるように座る。
「宗……っ」
頬に手が触れて、首の後ろまで滑ると、唇が塞がれる。
唇に触れた瞬間から強引に唇を開かされ、尖った舌先が執拗に私の舌を撫で、挟まれて強く吸われる。いつもと違う荒々しいキス。
「んっ…ふぁ……」
やがて肩までフローリングが当たって、宗一郎さんは私の体に覆い被さっていた。
「はっ……、はぁ……」
くたっと力の抜けた体。ずっとずっとキスされていたので、息が上がってる。やっと、呼吸を整えて、一番言いたかったことだけ伝えた。
「……お帰りなさい。宗一郎さん。」