秘密の会議は土曜日に
「俺は……これからも、理緒の元に帰っていい?」


あんなキスをした後で、びっくりすほど弱気な言葉。


「はい。これからも、ずっと私のそばに帰ってきてください。」


宗一郎さんは私の体を起こすと、強く抱き締めた。首に手を回すと、もっと強い力で胸が押し潰されて苦しい。


「ん……痛いですよ……」


「ごめん」と謝った後で「連絡が取れないから、本当に見限られたのかと思った。」と苦しそうに言った。


「……あ!」


携帯。あの時勢いにまかせて電源を切って、そのまま放置していたんだった。



「携帯、しまいこんで見てませんでした。

……すみません。」


「俺も誤解させるようなものを見せて悪かった。永田さんはあの日に酷く体調を崩して医者を呼んで、そのまま現地の病院に入院してたんだ。」


「え……そんなに?どんなご病気で?」


「あー……それは……」


珍しく躊躇った口調で言葉を切る。


「いや、理緒も事情は知ってたみたいだな。

何か怪しげな薬をネットで入手して、最初に俺に飲ませるのは良心が咎めたのか、試しに自分で飲んだら気分が悪くなったそうだ。」


「う……、そんな危険な劇物だったんですか!?

それで、永田さんは大丈夫だったんですか?」


「すぐに処置したから問題なかったよ。

俺も彼女に作為があるのは何となくわかってた。昔から勘は鋭い方なんだ。」


「やっぱり、エスパーみたい……」


「違うって。そんな便利な能力があれば、理緒を悲しませたりせずに済んだのにな。

仕事のことも、理緒の気持ちを軽んじるようなことを言って悪かった。あれは……」


「いえ、良いんです。私が馬鹿なんです。

宗一郎さんの立場が板挟みで辛いって、分かろうともしなかった。宗一郎さんが私を労ってくれてるのに、自分の気持ちばかり押し付けて、ごめんなさい。」


「いいんだ」と言った声は優しくて、そのあとはいつもと同じ、蕩けるようなキスに変わった。やがてそのキスは唇を離れて首や、鎖骨にも、肩にも続いていく。くすぐったい痺れが何度も続いて、体に力が入らない。


背中にすっと風が通り、宗一郎さんがワンピースのファスナーを下ろしているんだと分かった。


「え?、だ……」


肩からワンピースが落ちて下着が見えて、焼き付くような視線が恥ずかしい。身をよじる間にも、キスは下に下に降りていく。


「ぁ……待って下さい」


「もう、待てない」


抱えた体を寝室のベッドに下ろされて、あっという間にワンピースが脱がされる。宗一郎さんまでシャツを脱いでしまうので、直視できずに後ろを向いた。


背中にぴったりと感じる宗一郎さんの体温。優しい指先に撫でられて、息が上がるのを我慢できなくなる。


「好きだ」

「ぁ……私もっ……好き」


背中に舌が伝う感触。うっとりと目をつぶると、ブラのホックまで外されて、初めてのことに戸惑う。


「や……」


「綺麗だな……。

理緒が欲しい。あなただけが、俺の特別。全部、全部俺にください。」
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