秘密の会議は土曜日に
「でも、あの、噛みつかれたりする吸血鬼ふうな感じよりは採血の方がまだ……」




「……は?採血?」




* * *


皇帝閣下は目を針のように細くして、先ほどお作りになったトマトとチーズのリゾットをダイニングテーブルに2人分置いた。


「……で、現代の日本で会社員やってる俺が、処……女性の血を養分としてるとでも?」


「あのっ……それはですね。見た目がとてもお若く見えたので。」


「とても若く……ですか。一体俺のこと何歳だと思ってるんです?」


事業部長って凄く偉い人だし、それ以上のポジションなんて本部長と役員くらいしか残ってない。ましてやこの業界屈指の大企業となると……


「やはり還暦前後が妥当ではないかと。」


「……そんなに老けて見られたのは初めてだ。俺は31歳ですよ、勘弁してください。」


「見た目だけなら確かにそれくらいに見えますよっ!ですから超科学的な力で外見を維持されてるのではと推測をしまして。」



「……。そうですか。内面がジジイだと。」


私が何か口を開くごとに皇帝閣下は気難しそうな顔になるので、これ以上は不用意なことは言わない方がいいかもしれない。


さっきの会話の後で、恐る恐る「血、要らないんですか」と聞くと


「どうして血がいると思ったんだ……全然分からない。」


と皇帝閣下は長い間頭を抱えていた。




下を向くと濡れた髪が顔にかかるので耳にかける。ご温情により、私はシャワーをお借りして汗を流させて頂いた。

その時に「手を出したりしませんから」ともう一度念を押されたので、生き血を欲しがっていると勘違いしていたことは余程心外だったようだ。

生き血に関する話題は地雷、と心のノートに書き加える。
< 17 / 147 >

この作品をシェア

pagetop