秘密の会議は土曜日に
「ぐう」


お腹がなったので慌てて押さえる。しかしその音は静寂の中によく響いた。


「失礼しました……」


「ふふっ、腹減ってますよね。有り合わせで作った料理ですがどうぞ。」


「はっ。有り難くいただきます。」


きれいに盛り付けられたリゾットは有り合わせで作ったとは思えない仕上がりだ。これをパパっと作るなんて、明らかに私より女子力が高い。


「美味しい……なんて美味しい……

ここ最近食べたものの中で一番美味しいっ!」


「そんなに感激していただけるとは思ってなかったんで、嬉しい限りです。」


にっこりと目を細めた顔はさっきまでの仏頂面と打って変わってフワッとした印象に見える。でも、その後で付け加えられた一言に私はご飯を喉に詰まらせた。


「鬼畜の作るメシでも旨いものは旨い、と……。」


「ごふっ……。」


「陰で鬼畜だの皇帝だのと言われてるのは知ってるんで別にいいんですけどね?

想像の斜め上をゆく俺の印象について、原因を知りたいんですよ。

なぜ食事に誘ったくらいで吸血鬼の扱いを受けなきゃならないんでしょうか。」


皇帝閣下は笑顔を保っているけど、さっきの爽やかな微笑みではなく、瞳には意地悪そうな光を宿している。



話さなければ……わかってるだろうな?という心の声が聞こえてきそうなほど。


私はその目力に押されて渋々と口を割った。



「それは、閣下が私などをお食事に誘うからです。それにどんな意図があるのかと考えて」


「閣下……。

ま、いいです。今は聞き流しましょう。

そこは普通に親睦を深めたいとか、田中さんのことを知りたいからとか、そういう単純な理由を考えませんか?」


「それは可愛くてキラキラした女子だけがする推測です。私にそんな発想が許されるわけないじゃないですか。」


「謙虚というより、何だか病的な考えですね。」
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