秘密の会議は土曜日に
エヴァーグリーンインフォテクノロジーに着くと、今日は心に余裕があるせいかエントランスにいるオウムの名前の立て看板が目に入った。


打ち合わせにはまだ時間があるので、南国風の木にとまっているオウムに話しかける。


「キューちゃん」

「キューチャン!」


キューちゃんは近くに来て返事までしてくれた。なんてお利口で可愛いオウムなんだ。


「おはよう」

「オハヨ!」


賢いなぁ……と眺めていると


「オハヨ! タッカヤナギサン!」


キューちゃんは独特なイントネーションで閣下のお名前を呼んだ。動物にまで慕われているなんて、閣下はやはり相当な人格者に違いない。

ちなみに私は残念なことに、愛猫のりっくんを始め実に様々な動物に嫌われる体質である。


「キューちゃん、バイバイ」

「バイバイ!」


キューちゃんとのお喋りで発声練習をした後、閣下との打ち合わせに臨む。そのおかげで、会議室ではほぼ思い描いた通りの挨拶をすることができた。


「閣……高柳様、先日は誠に失礼いたしました。また、色々と御世話頂きまして大変感謝申し上げます。」


「いえいえ、気になさらないで下さい。私こそ遅くまでお引き止めして失礼しました。

……それでは、早速打ち合わせを始めましょうか。」


閣下はシャツにチノパンのビジネスカジュアルスタイルで、今日も爽やかなお姿をしている。


でも金曜日に会ったときのように自分の事を「俺」とは言わずに「私」と言って、言葉使いもどことなく丁寧になっていた。



お客様としてはとても理想的な様子なのに、その態度に何故か心をぐしゃっと潰されたような気がして首を捻る。
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