秘密の会議は土曜日に
ノートパソコンのテキストエディターを立ち上げて、画面越しに高柳様を拝見する。


濃紺のコートを脱ぐと白と黒のしましまのニットをお召しになっていて、カーキ色の細身のズボンを合わせたお姿はモデルのようにしゅっとして見える。このお洒落なカフェによく馴染んでいた。



「……いや。やっぱり、議事録書いて貰えますか?

今日の議事を見れば、あなたの自由過ぎる発想を理解するきっかけになりそうだ。」


「かしこまりました、お任せください。

本日の議事録はプロジェクト用のメーリングリストにお送りすれば良いですか?

できれば弊社課長や担当の吉澤にもCCで送付したいのですが……」


「ごほっ……。それは絶対に止めてください。

この議事録は関係者外秘です。つまり理緒さんと俺以外は閲覧不可の扱いでお願いします。」


高柳様が咳き込んだので、ご体調が思わしくないのではと心配になる。でもすぐに咳は治まり、送付先のメールアドレスを教えてくれた。


それは名刺に書いてあったアドレスと違っていたので、この会議の情報は余程厳重な管理が必要なんだと思う。


「ちなみに本日の議題は何でしょうか?」


「議題ですか……そうですね、この打ち合わせの目的は理緒さんと俺の親睦を深めることです。

第一回目としては、ひとまず俺が理緒さんについてもう少し知りたいと思っています。」


「……それは新規プロジェクトと関連が……?」


「同じ仕事をする者同士がお互いをよく知るのは、プロジェクトを円滑に進める上でも役立つでしょう。」


高柳様ともなると、プロジェクトに臨む姿勢からして私なんかとは全然違う。深く感銘を受けながらパソコンのキーボードを叩いた。
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