秘密の会議は土曜日に
「理緒さんは甘いもの好きですか?」


「はい、それはもうっ!三度の飯より大好きです。」


「それならよかった。」


高柳様はいつの間に注文を済ませていたのか、目の前にはキラキラと輝く美味しそうなお皿が運ばれてきた。


「こちら、ダージリン・オータムナルと本日のお勧めティーセットです。

デザートは左から順にカシスとブラックベリーのケーキ、焼きリンゴとカスタードのキャラメリゼ、スウィーティーのソルベでございます。」


ウエイトレスの方が言ったメニューは知らない単語だらけで理解できなかったけど、とにかく美味しそうなものだということはわかる。


宝石のようなスイーツが芸術的な配置でお皿に乗っていて、見ているだけで幸せでドキドキする。


「これは神々の食べ物でございまするか!」


「いえ……」


ウエイトレスの方はそう呟くと、またしても下を向いて口を押さえて足早にテーブルを離れる。あの女性はもしかして具合が悪いのに働いているのだろうか、可愛そうに。


「とりあえず食べましょうか、議事録は中断で。」


「はいっっ!いただきますっ。」


あまりにも綺麗で口に入れるのが勿体無い……なんて感想は、一度食べ始めたら忘れてしまうほど美味しい。


「ううう……世の中にこんな幸せなデザートがあるなんて……」


「美味しそうに食べますね。やっと少しリラックスした顔を見せてくれて嬉しいです。

……といっても顔は殆ど見えないんだけど。」


高柳様は私の前髪を横に流して耳に掛けようとしたので、慌てて椅子に深く座って体ごと遠ざかる。


「ひぎゃ」


「目が隠れてる。それじゃ見えにくいでしょう。俺も理緒さんの顔が見えない。」


「これは周囲の方々を不快にさせないための必要な措置であります。

言ってみれば社会の窓ですから、決して開けてはいけませぬっ」
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