秘密の会議は土曜日に
「駄目だ……怒らなきゃいけないとこなのに社会の窓とか言うから。」


高柳様は小さく肩を揺らして笑いをこらえているご様子だ。理由はわからないけど怒られるのを回避できたようで、ホッと胸を撫で下ろす。


「それはかなり前から死語だし、女性の前髪に使うのは大幅に間違ってる。

変な心配せずにかわいい顔を見せて下さい。」


高柳様から信じがたい言葉が飛び出した気がしたけど、聞き違いだと思うので正しい意味を想像する。


カワイイ

KA・WA・I・I……



……そうか、可愛そうな顔!


高柳様なりのお優しいオブラートに包んだ表現のということか!



「理緒さん、今何か閃いたようですけど多分それ間違ってますよ。」


「え、エスパー……!?」


「じゃなくて。リアクションで何となく伝わってないことは分かるんで。かわいいと言ったんです。」


「……。」


「かわいいですよ、とっても。」


その時、お水のお代わりを持ってきてくれたウエイトレスさんが小声で「フゥー☆」と呟いて、楽しげなステップでその場を離れた。さっきは具合が悪そうに見えたけど、元気そうで何よりだ。


「なるほど。あのウエイトレスさんは確かに可愛いですね」


「今の話の流れでその認識はおかしいでしょう。

俺は理緒さんが可愛いと言ってるんです。愛らしい、愛くるしい……と類似の単語です。意味わかりますよね?」



「すすすすすみませんが正しく聞き取れなかったようで、誇大妄想的な意味合いにしか聞こえなかったんで、私今日アタマおかしいのかもしれず……」


「いえ、その反応はもうわかってくれましたよね。

理緒さんは可愛い。これは忘れずに議事録に書いておいてください。命令です。」


「えええ?」


「その前髪、邪魔ですけど他の誰からも理緒さんの顔を隠してくれるという利点もありますね。」


「ですからっ、そのための措置でございます。隠しているのです。」


「俺が言ってるのとは『隠す』の意図が違うようですけど。」
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