秘密の会議は土曜日に

6 使えない社員の断髪式

日曜の朝、閣下から議事録がメールで送られてきた。




理緒へ

理緒のファイアーウォールは設定がおかしいから見直すように。俺の好意は少しも届かないのに、他人の悪意を驚くほど感受するのは理不尽じゃないか?

次回までの宿題:美容室で髪を切ってくること。






「閣下!これは全然議事録じゃありません……!」


様式も内容も通常の議事録とはかけ離れている。仮に私が会議の議事録をこんな形で提出したら、上司にどれだけ怒られることか。


内容を読み返すと気持ちがザワザワするので、愛猫のりっくんを撫で回して心を沈める。そのうちに、ついに怒ったりっくんが腕を引っ掻いて脱走してしまった。


「痛てっ。美容院……予約しなきゃね。」


お洒落な空間も男性も苦手な私は、美容院という場所に何年も行っていない。髪が伸びれば自分で切って結べる長さを保っている。勿論、前髪は顔が隠れる絶妙な長さをキープするためにメンテナンスはかかさない。


それなのに……美容院だなんて。


「ああ、気が重いな……」


私は髪を切るのをのをずるずると先伸ばしにして、気が付けば金曜日になっていた。今日こそ定時で帰って美容室に行かないと明日の会議に間に合わない。


「田中さん、ちょっといい?」


課長が随分とこわばった顔で私を呼んでいる。こんな日にトラブルでもあったのかな。今日は勘弁してほしいな……と思ったけど、違っていた。
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