秘密の会議は土曜日に
「こちらのハイヒールパンプスがお好みですか?」


華奢で、綺麗で、それでいて格好いいハイヒール。この前初めて履いたこのお店の靴よりも、さらにヒールが細くて高い。


多分、閣下の隣を歩く女性はこういう靴が似合うと思う。


店員さんに勧められて足を入れてみたけれど、足が痛くて歩けそうにない。まるでシンデレラのガラスの靴が入らない意地悪な姉妹のように、私はその靴の選定から外れたような気がした。


「ヒールに慣れないお客様ですと、こちらの5センチヒールが履きやすくてお勧めですよ。」


結局、店員さんに勧めて貰った無難な靴を二足買った。洋服と全部合わせると持ち帰れない量になったので、まとめて配送してもらう。


当然、服代はびっくりするほどのお値段になったけれど、普段は老後に備えるだけで使う当てもないお金なので、思いきって散財することにする。



「つ、疲れた……。これで何とかエヴァーグリーンに行く準備、整ったよね。」



かくして私は、水曜日から閣下のお膝元、エヴァーグリーン本社に常駐の身となった。


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