秘密の会議は土曜日に
水曜日、エヴァーグリーン本社内にて行われたキックオフミーティングは、今まで参加したどのプロジェクトよりも大規模なものだった。私などは会場に足を踏み入れるの躊躇ってしまうほど華やかだ。


「とりあえず、新しいスーツ来てきて良かった……。

カケル少年、ご助言感謝します。」


スーツと言っても襟が無い女性らしい雰囲気で、シンプルなデザインだけどラインはとても綺麗なタイトで……と店員さんが言っていた。

要は体に添う形状で、ジャケットの中にはしゅるんとしたブラウス……じゃなかった、『落ち感』だか『抜け感』だか、よくわからない感のあるブラウスを合わせている。


辺りを見渡すとざっと1000人くらいが会場に集まり、あちこちに『Green force 2』と書かれた深い緑のロゴが見える。プロジェクト名のロゴがデザインされているなんて、相当な規模と予算がかかっている。


「キックオフミーティングって、もっと事務的なものかと思ってたけど……。まるで式典みたい。」


ソワソワしている間に時間となり、上品なネイビーのスーツを身に付けた男性が壇上に上がった。

その男性が一歩足を進めるごとに会場は静まり返り、優美な立ち振舞い息を飲む。その人とはもちろん、プロジェクトマネージャーの閣下だ。


いつもはビジネスカジュアルなので、閣下がスーツを着ているのを見るのはこれが初めてだ。

凛とした姿がスーツによく映えている。もともとシャープな顔立ちだけど、今日はさらにキリッとして近寄りがたく見えた。


「本日は当社プロジェクト 『Green force 2』キックオフミーティングにご参加頂き、誠にありがとうございます。プロジェクトマネージャーを務める高柳です。

始めにお伝えしたいのは、ここに集まってくださった一人一人が当プロジェクトの主役であるということです。

これは当社社員、協力会社様の垣根なく皆様にご認識頂きたいことです。」


低くよく通る声で、閣下の開会挨拶が会場に響く。

壇上にいる閣下を眺めていると、先週末に一緒に居酒屋さんにいたのが信じられなくなってくる。


それくらい、閣下の存在は遠く見えた。
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