秘密の会議は土曜日に
「『Green force 2』プロジェクト、以降GF2と略しますがこのプロジェクトは決して楽な要件ではありません。

ですが、ここでの経験が皆様のキャリアを築く糧となることを私が保証します。」



確かな自信に裏打ちされた閣下の言葉。

この場にいる全員がスピーチに聞き入っている。私も真面目に聞かなきゃいけないのに、あまりにカッコ良くてぽーっとしてくる。



「……残念なことに以前のプロジェクトでは、稀に当社と協力会社様との間で必要以上の強い上下関係が敷かれているケースがありました。

私はそういった慣習を許しません。当社社員は改めて認識するように。」


この言葉にざわざわと会場がどよめく。

閣下が言ってるのって、前に担当者のオジサンが怒って机を蹴ったり怒鳴ったりしたような、あんな態度を許さないぞ、っていうことだよね。

エヴァーグリーンに限らず、立場の弱い下請けが叩かれるのはこの業界では良くある話なんだけど……。



「GF2には『下請け』という概念はありません。全ての組織はひとつの同じチームです。

各自が能力を存分に発揮して頂ければ、プロジェクトの成功は約束されています。」


結びの言葉に、溢れんばかりの拍手が起きた。


私、このプロジェクトでは下請けじゃなくてチームでなんだ……。閣下から真っ直ぐに向けられる言葉に、自然と頭を下げたくなる。

私も手のひらが痛くなるほど拍手を送って、どんな仕事でも全力で尽くそうと決意した。




ミーティングが終わると、休憩を挟んで懇親パーティーが始まる。パーティーまで用意されてるなんて、つくづく豪華なプロジェクトだなぁと思う。


でも私はこういったパーティーは正直苦手だ。閣下以外に知ってる人もいないし、やることが無いので仕方なく立食パーティーの食べ物を物色する。


でも、スイーツがたくさん用意されてるのは嬉しいかも。ケーキ美味しそうだなぁ……貰っちゃおうかなぁ……。



「そんな物欲しそうな顔で見てるなら、たんと食え。」


手に盛ったお皿を取り上げられ、山盛りのスイーツを乗せて返される。


「はっ。すすすみません、ご配慮痛み入ります。」


「お前、中学の時の変人田中だろー!懐かしいな!!」
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