秘密の会議は土曜日に
来ないでと思っている時ほどその時間はあっという間に来てしまうもので、既に研修会の初日のメニューは終わり、夕食と僅かな休憩時間を挟んで「二次会」、つまりエンドレスの飲み会が始まっていた。


ここは修善寺の高級温泉宿。さすがエヴァーグリーンだけあって、宿泊施設の予算が桁違いだ。温泉もとても良いお湯だし広々としている。


でも、残念なことに入浴時間が24時までなので、飲み会の前にお風呂に入らないといけないスケジュールだ。飲み会後にこそお風呂に入りたいのに……。


備え付けの浴衣に着替えてお酌をすると、和服に慣れないせいかとっても動きづらい。洋服と違って身に付けられる物も少ないので私用の携帯は部屋に置いてきた。


それでも仕事専用の小さな携帯は帯の中に入れている。どんな時でも緊急連絡用の携帯だけは手放せないのがシステムエンジニアの悲しい性。


「理緒ちゃん、そういう格好色っぽくて似合うねー。普段は着痩せするタイプ?」


「これはお菓子の食べ過ぎて皮下脂肪が増加しておりまして……」


「わかるー。いつもの服とのギャップがポイント高い。

でもたまに胸のライン出てるワンピとか着てると、ちょいエロくてつい見ちゃう。」


「それはお見苦しくて失礼いたしましたっ!」


頭を下げると余計に笑われた。これまでの飲み会と勝手が違いすぎて、どう対応して良いかわからない。とりあえず困ったらお酒を口に含んでおくことにする。


「良い飲みっぷり」


とぽとぽとお酒が注がれて、既にどれだけ飲んだか分からなくなっていた。こんなときに頼みの綱の鴻上くんは、ここから離れた場所でえらく盛り上がっている。


鴻上くん、いくらイケメンでも頭にネクタイ巻くのはどうかと思うなぁ。今時そんな会社員いるんだというくらい、クラシカルな酔っぱらいの姿をしている。
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