秘密の会議は土曜日に
背中の帯をしゅるんと引かれて、お腹の辺りが涼しくなる。頼りなく体にかかる浴衣をさらに肩からずらされて、殆ど着ている意味がないくらいになってしまった。


「ここ、赤くなってる。可愛そうに」


「ふゃ!」


肩に高柳さんの唇が触れて、びくっと固まる。高柳さんはまるで猫のように肩を舐めて唇を押し当てている。


「あの……ふにゃっ、くすぐったい……」


胸の前で浴衣の襟をつかんでも、それも剥ぎ取られて腰のあたりに落ちた。殆ど下着姿の……ブラとパンツ、キャミソールだけの格好になってしまって、恥ずかしくて体を丸める。

高柳さんには背中を向けているとはいえ、こんな姿を晒していると思うと顔が熱い。


「こうやって襲われるとは思わなかったの?」


太ももの上に手が置かれて、大きな手からは想像もつかないような柔らかさで撫でられる。


「んっ……ぁ」


その動きで、自分じゃない誰か別の人じゃないかと思うような声が出た。


慌てて口を押さえて声を止める……今のは何?


怖いのにお腹が熱くなって、もう一度同じように触ってくれないかな……なんて思ってしまった自分を戒める。


「まさかあれですか?私なんかが性的な衝動で襲われるなんてご懸念を?

あの方は確かにその方面の好奇心が旺盛でしたけど、いくらなんでも相手を選ぶでしょうし。

『もっと感じるキスを教える』なんて言ってたんで、恐らく過去のキス自慢でもする気だったのでは……?」


「理緒、これ以上俺を逆上させるな。」


「むわぁ!」


体を抱えあげられて、ふわふわのお布団の上に下ろされた。仰向けに寝かされた体に股がるように高柳さんが膝をついて、胸元にネクタイが垂れてくる。


怒った顔で黙っているのでどうしていいかわからずに身を捩って、それでもずっと黙って見下ろされている。


「高柳さん……?えと……見られるのに勿体をつけるような体じゃないのは重々承知してるんですけど、だからこそこの状態は落ち着かないっていうか、見せられたものじゃないっていうか……」


「危機意識が足りない」


「え?」


高柳さんの体が覆い被さって、柔らかく圧迫された。呼吸できないわけじゃないのに、どうしようもなく息苦しい。


「俺は理緒を好きだと言った。もちろん、こういうことを含めた『好き』だ。

今も必死で理性を保ってるだけ。あんまり無防備だとどうなるかわからないよ。」


胸の奥を引っかかれるような、不思議な痛みを感じた。逃げ出したくなって顔を背けると、それは許されずに仰向けに戻される。
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