【続】ねぇ…先生。。
『零、今回のテスト…頑張ったよな』
先生は立ち上がると私の頭に触れた。
そしてクシャクシャとする。
これをされる度に胸の奥がくすぐったくなる。
先生、そのこと知ってるからいつもやってくれるんだ。
「エヘヘ…だって、独り暮らしできなくなるもん」
照れ笑いする私。
私が独り暮らしをする条件は成績が悪くならないこと。
だからテスト前、私は必死になって勉強する。
それで今回のテストはなんとか成績を保つことができたんだ。
『もしさ、零が独り暮らしじゃなかったらこんなにうまく行かなかったかもな。』
先生は調理室の黒板代わりのホワイトボードの前に立つ。
「確かに…そうだよね」
先生の背中を見つめる。
どうやら先生は明日の調理実習の説明を書いているみたい。
先生はワイシャツのそでをまくっていて、腕の筋肉がよく分かる。
そのしっかりとした腕が好きで。
たまらなく好きで。
抱きしめられるたびに安心する。
先生の背中を見つめていると触れたくなった。
哀しそうな先生の背中。
何か感じているのに顔に出さない先生は私よりずっと大人で。
私は先生の隣にいれるような人間じゃない。
まだ子どもで、何もできなくて。
『ごめんね』
と、言う代わりに私は先生の背中に触れた。
先生、ごめん。
………ごめんね?
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