優しい人の周りには。
「救急です。はい。真田美優です。かかりつけの病院は…」
何度か電話したことがあったとしても、慣れることはない。
俺は、美優の手を握りながら、救急車が来るまで、何とか楽になるように、教えてもらった処置をする。
「美優、冷たいの当てるよ。」
「はあ…はあっげほっげほげほっヒューーーゼーーーヒューーーげほげほげほっ」
氷嚢を脇に当てたりしていると、急に美優は体を折って苦しそうに咳き込み始めた。
喘息特有の、息の音。
「喘息か…っ美優、深呼吸」
体を少し起こして、ゆっくり呼吸に合わせて背中をさする。
「美優〜?わかるか?吸入吸えるか?」
ベッドの脇の吸入器をほぼ意識がない美優の口に当てる。
「ゼーげほっーーヒューーーごほごほっ」
救急車が着いた頃には、俺は情けなくも半泣きで美優の背中をさすり続けていた。