バレンタインにはささやいて
「どうされましたか?」
なぜかジッと視線を向けてくる専務に、いたたまれず俯いた。
「何してたんだ?」
勤務中に乙ゲーなんて開いてたのがバレた?
「いえ……あの……」
「誰と?」
誰とって……。いつもよりなぜが凄みのある専務の言葉に、私はどう答えるべきかわからず唇を噛んだ。

「それをこっちによこせ」
手に握りしめていた携帯。私は慌てて首を振った。

「もうしませんから!」
そう言った私の言葉と同時に、グイっと手を引かれて携帯が専務の手の中へと移動した。
「あ……」
無表情でスマホの画面を見ていた専務の顔が、不敵な微笑みを浮かべたのを見て、恥ずかしさに涙が浮かんだ。

そんな私の耳元がふわりと温かくなった。

「千里……好きだよ。今日は俺の腕の中にいろよ。チョコはお前だよ」

晃君のイベントのセリフを、甘い大好きな声で言われて、私は真っ赤になって専務を見上げた。

「からかってるんですか?」
泣きそうになった私に、
「本気だよ。この男より俺を見ろよ千里」
その破壊力のありすぎる言葉に、私は真っ赤になってチョコレートを差し出した。
「後でお前ももらう」
チュッと額に降りたキスに「もうキャパオーバーです」と呟いた私に、「早すぎ」と笑顔を向けてくれた専務にまた恋をした。
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