仮面のシンデレラ



無意識のように口から出た感情は、初めて私に向けられた彼の本音だった。


すっ…


私は、少しだけ彼から離れてそっ、と囁く。


「…チェシャ。…顔を見せて…?」


「…!」


ふっ、と、素直にこちらを向くチェシャ。

綺麗なローズピンクの猫目が、きらきらとした涙で濡れている。

赤く染まった頰に、ぽろぽろと涙がつたっていた。


「…嫌いになったりしないよ。チェシャのこと。」


「…!」


不安げにまばたきする彼に、私はまっすぐ言葉をかけた。


「私の方こそ、チェシャの気持ちを考えないでごめんね。…私のことは、無理にエラって呼ばなくていいから。」


「!」


「…ウサギさんだって、きっと仕方なく私に魔法を預けてくれたんだろうし。エラさんの魔法を勝手に譲り受けて、お家まで住まわせてもらって…。…チェシャにもエラさんにも失礼だったよね。」


つぅ……


チェシャの頰に、新たな涙がつたった。

ぶんぶん、と首を振るチェシャは、私を見つめながら答える。


「ううん。…君は、“エラ”だよ。」


「え…?」


「僕を探して、無茶して、こんな傷だらけになって……。きっと、本当のエラもそうしてくれただろうから…」


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