仮面のシンデレラ
「エラちゃん!大丈夫?!」
その時、森の奥から青年の声が聞こえた。
「シラユキくん…?!」
私の声に、茂みから現れた彼はこちら見て、ほっ、としたように笑みを浮かべた。
すると次の瞬間。
巨大ムカデが彼に向かって鋭い尻尾を振り上げる。
「っ!危ない!」
さっ、と血の気が引いた。
彼は、避ける間もない。
ガシャン!!
(…!!)
尻尾の針は、確かにシラユキくんの体をとらえた。
しかし、彼の体は“粉々に砕け散る”。
(え…っ?)
破片を見ると、それはキラキラとした“鏡”だった。
「…コッチだよ。」
意識していない方角から、シラユキくんの低い声が聞こえた。
はっ!とした瞬間、オズとシラユキくんが勢いよくムカデの背中を蹴り飛ばす。
ドォン!!!
「「…!」」
呆気にとられるチェシャと私。
シラユキくんは、童話の白雪姫に出てくる“魔法の鏡”を利用して、自らの居場所を欺いていたようだ。
私は、無意識に彼に呟く。
「…シラユキくんって、運が悪いだけじゃなかったんだね…」
「!そうだよ!見直して!」
失礼すぎる発言を笑顔でかわした彼は、林檎色の瞳を輝かせて、タン!と地面に降り立った。
オズも、シラユキくんの隣に静かに降り立ち、気だるげにこちらへ視線を向ける。