仮面のシンデレラ

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ギィ…


月が空のてっぺんに輝く頃。

俺はウサギの家へと到着していた。

不用心にも、合鍵の在り方がポストの中という分かりやすい場所にあったため、俺はすんなりと家に入ることに成功したのだ。


(…ウサギは、いないか…。)


希望が、呆気なく崩れ去る。

家の中は真っ暗で、しぃんと静まり返っていた。


(…なんだ、チェシャもいないのか…?)


部屋中を見渡してみるが、彼の気配はない。


(…さすがに、エラの部屋に入るのはまずいよな……)


急に、緊張感が高まった。

全然悪いことをしていないのに、何故だかイケナイことをしている気分になる。


「…。」


俺はぐるぐると思考を働かせた結果、エラをソファの上に寝かせることにした。


…ドサ…


気を配りながら優しく降ろす。

エラは相変わらず無防備に寝息を立てていた。


(…っとに、コイツは…)


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