仮面のシンデレラ


ごくり…!


喉を鳴らし、大きく頷く。

…と、次の瞬間だった。


『…わざわざここまでやって来るとはね。』


(!!)


どこからか、トレメインの声が響いた。

はっ!としたその時、目の前の重い扉が音を立てる。


ガチャン!


「「!」」


操られるように開いた扉の先に見えたのは、“真っ黒なドレス”だった。

緩く弧を描いた真っ赤な唇。

薔薇色の瞳が、不敵に細められた。


どくん!


彼女の姿を見た瞬間、さぁっ、と血の気が引いた。

ここまで得体の知れない恐怖を感じた経験はない。

まるで、今にでも取って喰われそうなほど敵意の満ちた瞳。

攻撃的な視線が私を貫いた。


「…ひどく目障りだわ。今すぐ消してしまおうかしら。」


彼女の言葉に、びくっ!と体が震えた。

憎悪の感情が、ひしひしと伝わってくる。

つい、怯みそうになったその時、オズが私の方を見た。

彼のエメラルド色の瞳を見た瞬間、はっ!とする。


(…そうだ。私はここで逃げ帰るわけにはいかない…!)


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