仮面のシンデレラ
ぐっ!と手のひらを握りしめ、彼女と対峙する。
すると、トレメインは小さく目を細めて口を開いた。
「わざわざ、何の用かしら。まさか、自分から消されに来たの?」
冷たい言葉に、私は覚悟を決めて言い放つ。
「…違うわ。私は、あなたに“宣戦布告”をしにここに来た。」
「…!」
トレメインが、わずかに目を見開いた。
私は、彼女の前でぐいっ!とオズの腕を掴む。
「!」
魔女の瞳が鈍く光った瞬間、私は高らかに叫んだ。
「私は、オズを連れて人間界に帰る!だから、オズを縛っている契約を今すぐ破棄して…!」
「!」
もう、後戻りは出来なかった。
一層、憎悪のオーラを濃くするトレメインは、感情が揺さぶられたかのように低く答える。
「あなた、“契約破棄の条件”を知って、言っているの?」
私は、彼女から視線を逸らさずに言い切った。
「もちろんよ。オズとの契約破棄の条件は、“契約主の死”。…でしょう?」
私を睨みつけたトレメインが、ぽつり、と呟く。
「…私に、死ねと…?」
沈黙は肯定だ。
私は、静かに口を開く。
「あなたに解く気がないのなら、他に方法はないわ。」