仮面のシンデレラ

オズが驚きで固まると同時に、我慢の限界に達したトレメインは、カッ!と薔薇色の瞳を鋭く光らせる。


「よくも…!よくも私のオズに…!!」


ブワッ!!


トレメインの魔力が、一気に解放された。


「誰がなんと言おうと、オズは一生、私のしもべよ!!」


ズワッ!!


次の瞬間。

禍々しい魔力が、オズの体を包み込んだ。


「かはっ!」


オズが小さく声を上げると同時に、トレメインの魔力がオズの体内へとながれこんでいく。


(!!)


呼吸が止まり、息をすることさえできない。


「オズ!!!」


トレメインの姿が、ぐにゃりと歪んだ。

彼女の実体が魔力に変わっていく。

闇の中で、オズのエメラルド色の瞳が光を失った。


(…!!)


ゴォォォッ!!


オズの体の中にトレメインが魔力ごと入り込み、一体化していく光景は、この世のものとは思えないほど不気味で視線が逸らさない。


パァン!


魔力の流れが止まった瞬間、闇のモヤが晴れた。

そこにいたのは、“オズ”。

しかし、その瞳は薔薇色に染まり、顔つきも私の知る彼とはまるで別人だった。


『アッハッハッハッハ…!!これでもう、オズは完全に私だけのものだわ…!』


高らかに響いた声は、石造りの壁に反響して耳に届く。


(…オズの中入り込んで、心も体も奪ったってこと…?!)


すると、ギョロリ、とオズを取り込んだトレメインが私を睨んだ。

獲物を捕らえた獣のような瞳が私を映す。


『さぁ、今度こそ“処刑”の時間よ…!この場で、私が手を下してあげるわ!!』


(!!)


…と、トレメインが薔薇色の瞳を輝かせようとした

次の瞬間だった。

< 227 / 250 >

この作品をシェア

pagetop