仮面のシンデレラ


それは、紛れもない本物の“オズ”。

彼を取り込んだと思いこんでいたトレメインが、激しく動揺して髪の毛をグシャグシャとかき上げる。


『ど、どうなっているの?!今さら分離など出来ないはず…!じゃあ、私の“器”となったこの男は…?!!』


と、その時だった。


ボーン!ボーン!ボーン!


国中に低く重い音が響き渡る。

“午前12時を告げる鐘の音”が、シンデレラの魔力の消滅を大きく告げた。


ポゥッ…!


私の体が徐々に“アリス”へと戻っていく。

それと同時に、トレメインの体が空色の光に包まれた。


『?!!…か、体が動かない…?!』


苦しそうに顔を歪めるトレメイン。

指先の色が薄くなった瞬間、彼女は薔薇色の瞳を見開いた。


『ま、まさか、この器は…!!』


彼女が全てを察したように呟いたその時、黒い笑みを浮かべたウサギさんがさらり、と言い放つ。


「…そう。貴方がオズだと思い込んで取り込んだ器は、“アリスがシンデレラの魔法で作り出した人形”ですよ。」


『!!!』

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