仮面のシンデレラ


ドッ!!


短剣は、確かにウサギさんの胸を貫いた。

しかし、その瞬間、彼の姿に“ピシッ”とヒビが入る。


(え…!)


突き刺さった短剣を中心に、蜘蛛の巣のように広がる亀裂。

パキン!、と小さな“ガラス”の音が響いた。

ウサギさんの“虚像”が、角度を変える。


『!なっ…?!』


トレメインが瞳の色を揺らした瞬間、聞いたこともない冷たい声が響く。


「…“コッチ”ですよ。」


「「『!!』」」


背後からウサギさんの声が聞こえた。

オズとともに振り返ると、そこにあったのは“拳銃”を構えたウサギさんの姿。

短剣で貫かれたはずのウサギさんが、パァン!と消え去る。


(まさか、あれは“シラユキくんの鏡”…?!)


その場にいた全員が声を失った瞬間

ウサギさんが引き金に指をかけた。


「…僕の勝ちだ、“トレメイン”…!」


(!)


───パァン!


1発の銃声が玉座に響いた。

撃ち抜かれた薔薇色の魔女が、シンデレラの魔法とともに消えていく。


パァァァッ…!!


まるで夢であるかのように、実体が歪んで空気に溶けた。

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