仮面のシンデレラ

すべてが明らかになり、暴かれた過去。

ウサギさんは、この世の全てを悟ったようないつもの表情で、穏やかに笑う。


「エラの代わりに僕が息をしていること。…それが僕の“罪”で、僕への“罰”だった。」


ふっ、とこちらを向いた彼は、私とオズを見つめて優しく続ける。


「君たちを利用したことは悪く思っているよ。…だけど、お陰で僕は救われた。」


すると、彼は背負っていた重荷を下ろしたような、純粋な笑みを浮かべた。


「罪を犯して汚れた僕は、エラの待つ空へは還れないだろうけど…。…こんな僕でも、少しは彼女に何かを返せたかな。」


遠い目をしたウサギさんは、まるで天国の彼女に尋ねるように呟いた。

その声は、微かに震えていて、初めて彼の心の声が聞けた気がした。


「…大丈夫。」


「!」


私の言葉に、ウサギさんはこちらを向く。


「きっと、エラさんは報われたと思う。…いっぱい回り道をしたかもしれないけど、エラさんを思ってしたことに間違いなんてないよ。」


ウサギさんは「ふっ…」と、小さく笑った。


「…君には敵わないな。」


陽の光がカーテンの間から優しく差し込んだ。

マンションの部屋に、全ての闇が払われた穏やかな空気が流れたのだった。


第4章*終
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