仮面のシンデレラ


泣きじゃくるチェシャを、ウサギが、そっ、と抱きしめた。

伏せたネコミミを、ウサギが優しく撫でる。


「…君のご主人様は、いつも側にいるだろう?…僕の中にも、彼女はいるよ。」


「…」


チェシャの尻尾が、ウサギに寄り添うように動いた。

ウサギは、優しく少年に囁く。


「チェシャ。君を1人になんかしないよ。温もりが欲しいなら、僕がこうやって抱きしめてあげる。悲しい夜は、一緒に眠ってあげる。…僕じゃダメかな?」


チェシャは、ウサギのシャツに顔をうずめながら小さく答えた。


「………だめ……エラがいい……」


「あはは、そっか。そうだよねぇ。」


ぽんぽん、とチェシャの頭を撫でたウサギは、すっ、と立ち上がってチェシャを見つめる。


「チェシャ。君の気持ちは分かるけど、今は、ここにいる“エラ”を大切にしなきゃいけないよ。…彼女に、何をしたの?」


チェシャは、少しの沈黙の後、小さく答えた。


「…看板を魔法で隠して、森の奥へ行かせた。…それからは、会ってない。」


(!)


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