仮面のシンデレラ
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「チェシャー!チェシャーっ!!」
彼の名前を呼びながら、ひたすら森の中を進む。
(…どこにいるのかな…?もしかして、シラユキくんみたいに罠にかかって落とし穴に落ちたとか…?)
不安を胸に、きょろきょろと辺りを見回すが、少年がいる気配はない。
ザッ…ザッ…ザッ…
生い茂る木々を避けながら進んでいた
その時だった。
…ポツ。
(え…?)
目の前の葉っぱに、空から雫が落ちてきた。
上を見上げた瞬間。
顔にぽた、と雫が落ちる。
ザァァァッ!!
(!あ、雨…?!嘘でしょ…?!!)
とっさに大きな葉の下に逃げ込む。
ぞくり…!
急に冷え込んだ森の空気に、体が震えた。
と、その時。
フッ…!
「!」
道しるべとしていたイモムシの煙が、雨に打たれて歪み始めた。
「ま、待って!消えないで!!」
そんな声も虚しく、煙はボワッと広がって空気に混じる。
見えなくなった希望の光に、私は言葉を失って立ち尽くした。
(…!帰り道が…分からなくなっちゃった…?)