フォンダンショコラみたいな恋(短編)
まず、彼と話すことの無かった私が毎日のように話すようになった。



「なぁ、れんれん。」



「変なあだ名で呼ばないでよ。」



「教科書忘れた。」



「なっ!またぁ!?あなたね、学生の本分は勉強なの。教科書持ってこないでどうやって勉強するのよ。」



「れんれんが貸してくれる。」



彼はいつも1つは忘れ物をしていた。そして、私はいつも彼に何かを貸してあげていた。



「あとなぁ、俺は『あなた』じゃなくて『まこと』!ほら、リピートアフターミー?ま、こ、と」



そして彼はいつも、私が名前で呼ぶように言ってきた。



「おいっ!無視すんなよ、ほらリピートアフターミー?ま、こ、と」



「あ、な、た!!」



そんな簡単に異性の下の名前を呼べるかっての!



「ま、こ、と!!!」



「あ、な、た!!!!!」



「ぷっ……は、は、ははっ。」



私たちが言い争っていると後から笑い声が飛んできた。



「はははっ。『あなた』って…はっはは。夫婦かよぉ〜」



笑っているのは私達の後ろの席の女の子だった。



「だよな!?おかしいよな、『あなた』って呼ぶのな!」



仲間が出来たのが嬉しいのか、華岡くんは先程よりも勢いよく喋る。



「うん…まぁね、ははっ。……ははっ。………ふう。」



やっと笑いが収まったようだ。



「でも、急に男子に下の名前で呼べ!って言われたってハードル高いよねぇ。」



笑いすぎて出た涙を拭いながら、彼女はそう言った。



「うっ。ま、まぁそうだけど…。結局は女は女の味方かよー。」



ふてくされたように彼は、ぶつぶつ言っていた。



「……今度から華岡くんって呼ぶから。それと、日野さんありがとう。」



やっぱり彼のペースに巻き込まれている気がしたが、仕方なく妥協策として 苗字で呼ぶことにした。



「まっ、今はそれでいいか…!やっと友達らしくなったな!!」



……友達。



「わぁ、蓮城さん私の名前覚えてくれてたの!!」



「蓮城じゃなくて、れんれんな。」



「れんれん!これ、華岡がつけたの?かわいーあだ名。」



…あだ名。



「じゃあ、改めてれんれん!私は日野 杏です。よろしくね!」



私にとって慣れない言葉だけど、嫌じゃない言葉。



「うん、よろしく……。杏。」



嬉し涙で少し視界がぼやけたのは、きっと気のせい。



でも、私に友達が2人も出来たのは 気のせいじゃなかった。
< 13 / 13 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

これは恋ではありません

総文字数/13,750

恋愛(純愛)73ページ

表紙を見る
君と僕と記憶と。

総文字数/16,967

恋愛(純愛)58ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop