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「ていうかいっつも家に来て何しているんですか?」

さらりと言うと、翔太サンは見る間に悲しそうな顔になった。

「今すごく、ものすごーくひどいこと言ったよ、ユカちゃん」

インターホンが鳴って出てみると翔太サンだった。
ケン兄待ちで家にきたらしい。
ひとまず今までの疑問をぶつけてみただけなんだけど。

「素で疑問だっただけです」

翔太サンは腑に落ちない顔で「いいけどね、いいんだけどね」と勝手に拗ねている。
この人、本当に年上なんだろか。

「楽譜の書き方教えてもらってるの。
自分で曲作っても忘れちゃいそうだから書ける方がいいなあと思って」

意外と真面目な理由だ。

「ただ遊んでいるわけじゃなかったんですね」

「ユカちゃーん、さっきから失敬なことばっかり言っているよー」

翔太サンは両手で顔を覆ってわざとらしい泣き真似をする。

「すみません。悪気はないです」

「ないの、悪気」

翔太サンはがっくりと肩を落とす。
ああ、しまった追い討ちを掛けてしまった。と思うがフォローするのも面倒くさい。
とりあえず上がって下さい、と私は翔太サンを誘導する。
このままじゃ玄関で話し込んでしまいそうだ。

ケン兄の部屋にお茶を持って行くと、翔太サンは楽譜を広げて音譜を書き殴っていた。

「ユカちゃん、気が利くー」

翔太サンはぱっと手を止めて嬉しそうにはしゃいだ。

「どういたしまして」と言って腰を浮かすと

「え、行っちゃうの?」

何が、「え」なんだ。

「だめですか」

問い返すと「だってケンイチが来るまでヒマ」と翔太サン。

知ったことか。

とはさすがに言えない。

「…楽譜に集中しているの邪魔するのも悪いですから」

「ケンイチ来るまで相手してよー」

…駄々をこねる年上が目の前にいます。

私は思わずため息をついた。

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