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2-2

「どうしたんだ、佑香。ぼーっとして」

お父さんの声にはっとする。
晩ごはん中だった。
今日は肉じゃがで他にキュウリの酢の物とおからの和え物。
私の隣にケン兄、目の前にお母さん、斜め前にお父さん。

「なんでもないよ」

そうか?とお父さんはにこにこ笑って言う。
お父さんは見るからに優しそうな顔をしている。
眼鏡をしていて、いつもにこにこしている。お喋りではないけれど、無口じゃない。
優しいお父さん。

お父さんが家に来てから、食卓に前より和食が出るようになった。
週に3、4回は4人で食卓を囲んで晩ごはんを食べている。

ちょっと前のことを思い出すと、不思議な気分になる。
お母さんが再婚してすぐの頃はこの光景に慣れなかった。
それまでずっと一人でごはんを食べていたから。

よかったなぁ、と思う。
お母さんがお父さんと再婚して。

「そう言えばケンイチ、この前の模試どうだったんだ?」

ケン兄はそつなく「まあまあだったよ」と答える。
きっとケン兄のことだから、いい結果だったんだろう。
自慢の兄っていうのはケン兄みたいな人のことなんだろうな。

「佑香、あんたもお兄ちゃんに似ればよかったのにねえ」

(は?)

この人、何言っているんだろう。

お母さんの言葉に思考が停止する。

この人、何言っているんだ。

「―――佑香は佑香だよ」

隣を見た。
一瞬、ケン兄と目が合う。
ケン兄は微笑んでいた。

「そうねえ」

とお母さんは悪気なく相づちを打つ。
それはたったの一瞬で、ケン兄は箸を動かしていた。

(本当によかった)

そう思うのはこんな瞬間。

お母さんは時々おかしなことを言う。
とてもおかしなことを言う。

たった数年前までの、『お母さんと二人きりのごはん』を思い出す。
パート帰りのお母さんはいつもピリピリしていて、私はその時間が迫ると気が重くて仕方なかった。
逃げ出したいのに逃げ出せない、あの時間。

今は、お父さんもケン兄もいる。

ほっとする。
こんな瞬間、心から私は安心する。
今も。
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