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翔太さんの部屋は、ずい分小さく見えた。
でもよく考えたら広すぎるリビングを見た後だからそう思うのかもしれない。
ベッドと机とギター。
床に積まれた大量のCD。
前に見たパーカーがハンガーに掛かっている。

「部屋キレイですね」

CDを選んでプレーヤーに突っ込む背中に言う。

「うーん、習性だね。昔っからキレイにしておかないと落ち着かないから。
…ちょっと意外とか言うんでしょ」

翔太サンは振り返った。
私は頷く。

「ひどいー」

いつもみたいに抗議の声をあげて、翔太サンはぶつぶつぼやきながらリモコンでCDをかけた。

(あ)

パブロ・ハニー。

ベッドを背もたれにして翔太サンは座り、私を見て隣を叩いた。
翔太サンを見ると「ほら」と顔に書いてある。

「ほら、隣すわんなよ」って。

当然のような顔をするので、何か言いたくなったけれど、やめた。
想像がつく。たぶん翔太サンはうゴネて上手いこと私を隣りに座らせるだろう。
大人しく隣りに座る。

「お母さん、帰ってくるの遅いんですね」

机の上の時計を見ると9時を回っている。

「ああ、あいつ仕事。水商売だから帰ってこないよ」

さらりと翔太サンは言った。
予想外の答えに言葉を失う。
そんな私を見て、翔太サンは苦笑する。

「そんな驚かないでよ。って言っても慣れているんだけどさ」

「…ごめんなさい」

不意に、初めてあった時のことを思い出した。
似たようなこと、私も言ったっけ。
素直だねえ、と翔太サンは茶化して笑った。

「父親が小さい頃に死んで、母親は女手一つでオレを育てるために水商売。この家は父親が死んでから引っ越してきたんだよ。
…て何話してんだ」

体育座りで背を丸めた翔太サンは「あー」とぼやいた。

「オレね、今結構緊張してんのよ」

隣を見る。
目が合った。
翔太サンはにっと笑っている。

言われて、実感する。
隣の人の緊張と、自分の心臓の音。
さっきから気付かないフリをしていた、
のに。

翔太サンは目を逸らした。
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