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みどりさんは美人だ。
化粧が濃くて明るい茶色にパーマがかかった長い髪。
パキっとした、エナメルの赤とか黒とかコントラストの強い色が似合いそうな、そういう美人なお母さん。

「みどりって呼んでね」

初めて会ったときにみどりさんにファニーフェイスで言われた。
翔太サン曰く、自分のことを「お母さん」とは呼ばせないらしい。

いつも淹れてくれる、みどりさんお気に入りのアールグレイをリビングで一緒に飲む。
みどりさんが家にいる時はいつも出勤前らしい。

「ユカちゃん、今度髪いじらして」

「え?」

唐突に言われて戸惑う。

「一度やってみたかったの。
綺麗な髪なんだもん。
翔太が女の子だったら、私絶対髪結ったりかわいいお洋服着せたりしてたと思う。
女の子は、女の子ってだけでかわいいイキモノだもの。
ちやほやしたくなるでしょう?
娘がいたら、ユカちゃんみたいになっていたかな~って思うとね」

私は目を瞬かせた。
すごい。
言い切っちゃうみどりさんは、堂々としていて潔くてキラキラしている。
私は慌てて首を横に振った。

「そんな、みどりさんの娘ならもっと絶対美人です」

みどりさんはぷっと吹き出して、ケラケラ笑い転げた。

「ユカちゃん、変なところで力説するのね」

人ってこんなふうに笑えるんだな、と感心してしまう。
みどりさんの笑顔は咲き誇る花のようで、少しドキっとする。

(お母さんとは正反対)

お母さんは地味で、あまり化粧をしない。
もともとそんなに美人ていうわけでもない。
服装は昔よりマシになったけれど、ほとんど膝下の丈の地味なスカート。
みどりさんみたいにミニスカートなんて絶対履かない。
いや、ミニスカートを履いて欲しいわけじゃないし、履かれても困るけど。

昔のお母さんの姿を思い出して、少しうんざりする。
疲れた全く化粧をしない、皺が目立つ顔。
くたびれた格好ばかりしていた。

「ところでユカちゃんって、」

はっと我に返って顔を上げる。

「翔太のカノジョ?」
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